明治・大正・昭和を生きた日本人絵付師の生涯

美術、陶器、戦争、NY渡米、渡欧。明治・大正・昭和を生きた夫の曽祖父の自叙伝。大変興味深い内容でしたのでブログにしました。

第十一章 ヨーロッパ行(イギリスからオランダ迄)(3)

歩道にはレストランが軒を突き出したりテントを張って美しく飾りその下には椅子やテーブルが並べてあり人々の食事や休憩の場所となっている。パリーの宵は淡い電燈のもとで何となく情緒がある。

ブルーバール通りはニューヨークの五番街通りロンドンのバイスウォーター通りの様に代表的な道路でパリーを囲む環状道路になっており大道路の代名詞である。中央は両側のアカシアの樹が界となりベンチが所々に置いてある長い公園になっていて夏は夕涼みや散歩をする人が、一杯で夜更けまで賑わっているとの事だ。その両側は車道、人道に別れている美しい道路だ。街は幾つかの環状道路に囲まれて市中には公園、大劇場等の娯楽設備が多く各建物は七階以上も以下も法律で禁止されているので一定の高さに揃っておりロンドンの様に高低がなく整然としている。外国人観光客の多い事は世界一という事だ。

市中には古い建物が多い。ノートルダム寺院はゴシック調の荘厳な建物でノートルダムの怪獣が有名である。建物の欄干やその他、所々に怪獣の彫刻が突き出ている。内部は薄暗く重苦しさが漂っているがキリスト教信者でなくても敬虔な気持ちにさせられる。

ルーブル博物館はセーヌ河右岸にある旧王宮でフィリップ王が千二百四年着工、其の後代々の王朝が補足増築し今日の広大な建物となったのである。其の後革命により開放せられ次いでナポレオン一世が此処に世界の美術品を集め一大博物館として後世に伝えた物である。

此処に集められた物は名画、彫刻等貴重なものが多く殊に絵画ではレオナルドダヴィンチのモナ・リザやキリストの「最後の晩餐」の様な傑作やラファエルの物は特に多く彫刻ではギリシヤ、ヘレニズム時代(紀元前百数十年)の代表作として作者は不明であるが「ミロのヴィナス」は最高の傑作として有名である。この他枚挙に暇なく走って一通り見ようと思っても、とても一日では全館を見る事は出来ない。

エトアール凱旋門はナポレオン一世が建てた物で其の後ナポレオン三世の時に街区が整理され此の凱旋門を中心として放射状の道路が出来た。此処には無名戦士の碑があり現在は今次大戦犠牲者の霊を弔って花輪が山となり香煙も絶え間無く漂っている。私も最敬礼で其の冥福を祈った。道路の中でもコンコルド広場からシャンゼリゼーを通る二哩(約三粁)の大通りは世界に比類がない。

 

 

 

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