明治・大正・昭和を生きた日本人絵付師の生涯

美術、陶器、戦争、NY渡米、渡欧。明治・大正・昭和を生きた夫の曽祖父の自叙伝。大変興味深い内容でしたのでブログにしました。

第十二章 ドイツ行から帰国迄(5)

香港に着いたのは二十九日だったと思う。そこの傾斜地に建てられた住宅の夜間の光の美しさは有名である。船は段々日本海に近くなった。上海に寄航してから冬服に着替えたり荷物の整理をする。四十余日の航海も終り数日後には長崎に着くのだ。

船中では「さよならパーティー」の話や帰国後の予定を考えたり国へ安着の電報を打つ等で皆々多忙を極めている。この航海ではインド洋は相当荒れると聞いていたが毎日静かな平穏な航海で五十日近い船中の生活ではあったが、こんな楽しい別天地の様な生活なら何日でも乗っていたいと思った程である。大正十年二月十一日無事神戸へ入港、戸毎に翻る日章旗、今日は私の四十二回目の誕生日だ。同十六日名古屋へ帰る。

  欧州旅行費用 自大正九年十一月十三日  至大正十年二月十一日

 〇アメリカでの領事諸証明費用ーーーーーーー$    三.〇〇(    六円)

 〇アメリカ、イギリス間汽船運賃ーーーーーー$  二〇五.〇〇(  四一〇円)

 〇同船中費用ーーーーーーーーーーーーーーー$   五〇.〇〇(  一〇〇円)

 〇欧州各地宿泊費及び食事代ーーーーーーーー$  三四二.七三(  六八五円)

 〇同右雑費ーーーーーーーーーーーーーーーー$  一八一.八二(  三六四円)

 〇同右鉄道運賃及び交通費ーーーーーーーーー$  一五一.四四(  三〇三円)

 〇フランス日本間汽船運賃ーーーーーーーーー$  三五〇.〇〇(  七〇〇円)

 〇同上船中費用ーーーーーーーーーーーーーー$  一二〇.〇〇(  二四〇円)

     合計ーーーーーーーーーーーーーーー$一、四〇三.九九(二、八〇八円)

この他給料及び見本買い入れその他

 〇給料 大正九年十一月二十七日ー同十年二月十一日

                      $  六七五.〇〇(一、三五〇円)

 〇見本買い入れ費ーーーーーーーーーーーーー$  二二七.七五(  四五〇円)

 〇日本での見本の税金及び陸揚費ーーーーーー$   四七.四三(   九五円)

     合計ーーーーーーーーーーーーーーー$  九五〇.一八(一、九〇〇円)

     累計ーーーーーーーーーーーーーーー$二、三五四.一七(四、七〇八円)

 *参考 (百円=四八~四九ドル、一ドル=約二円 大正元年~十年頃)

  当時の物価の一例   大正八~十年頃

  白米(十瓩)     三円四銭

  乾海苔(一帖十枚)   二十銭

  葉書         一銭五厘

  そば(もり、かけ)  八~十銭

  並塩(一瓩)     八~九銭

  封書           三銭

  牛肉(中 百瓦)   二十一銭

  味噌(上一瓩)  二十八~九銭

  電話料金         五銭

  豆腐(一丁百匁以上)   五銭

  砂糖(白一瓩)     五十銭

  市電料金         七銭

 

 

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