明治・大正・昭和を生きた日本人絵付師の生涯

美術、陶器、戦争、NY渡米、渡欧。明治・大正・昭和を生きた夫の曽祖父の自叙伝。大変興味深い内容でしたのでブログにしました。

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

第五章 兵役時代(1)

昨日の美術家も今日は三分刈りの丸頭で衛兵の立っている第三師団野戦砲兵第三聨隊の営門を潜ったのは明治三十四年十二月一日の午前七時頃だった。 六名の一年志願兵は第六中隊付となって教育を受ける事となった。 兎に角画筆より他に重い物を持った事の無い…

第四章 京都下宿時代(3)

今では書生等という言葉は使わないが当時は学校の生徒でも書生さんと言った。そして決まって黒の紋付き羽織に小倉の袴で羽織の紐は白で二尺位(約六十糎)もあった。それを先の方で結び首に掛けて歩いていた。下駄は朴歯の太い鼻緒のついた桐の厚いものでゴ…

第四章 京都下宿時代(2)

主な事は万事女将が切り回していたが下宿代の事等はあまり督促がましい事を聞いた事が無かった。下宿人は全部で十二、三人は居た様だ。私は始め二階の三畳七分五厘という四畳に足りない隅の室で半年許り辛抱していた。下宿代も安かったが三畳七分五厘舎の主…