明治・大正・昭和を生きた日本人絵付師の生涯

美術、陶器、戦争、NY渡米、渡欧。明治・大正・昭和を生きた夫の曽祖父の自叙伝。大変興味深い内容でしたのでブログにしました。

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

第十章 ニューヨーク市所見(1)

ニューヨークの生活は淋しいがその中でも楽しく呑気な所があった。 家庭の雑事も無く、金をポケットにジャラつかせて居れば食べる心配も無く土曜日は半日、日曜日は自分の身体で勉強したければ勉強もできるし遊びたければいくらでも勝手に遊ぶ事も出来る。サ…

第九章 ニューヨーク生活(3)

明治四十五年七月三十日 日本では天皇が崩御せられ在留邦人は謹んで喪に服した。 翌三十一日 年号は大正元年となり在留邦人は皆黒の服装を着る事となった。 大葬遥拝式は九月十二日午後九時(国内では十三日)第七街と五十七丁目角のカーネギーホールで行わ…

第九章 ニューヨーク生活(2)

友人達は「ホームシック」に罹らない様にと、日曜日には市中の見物や或は重役の家へ案内して呉れる等色々慰めて呉れた。地下の食堂とか、支那料理屋や時にはホテルの食堂等へも連れて行って呉れたり一日も早くニューヨークに馴れる様面倒を見て呉れた。 さて…

第九章 ニューヨーク生活(1)

W君はブロードウエイの森村ブラザーズの近くのワシントンプレスにある英国人の婆さんが経営している下宿屋へ案内して呉れた。彼女の名前はミセス・チャザムといって五十才位のデブデブ肥った大きな人だった。(Mrs.Chatham 74 WASHINGTON PL., N.Y.) この…

第八章 渡米(横浜出帆からニューヨーク迄) (3)

七月七日 月曜日 午後二時十分発の列車はシカゴ、ニューヨーク間千哩余を(千六百粁)十八時間で走る「二十世紀特急」という超特急で一時間で六十から八十哩(百~百三十粁)走る。 この間止まる駅は九ケ所でニューヨーク近くのオルバニー(OLBANY)という駅…

第八章 渡米(横浜出帆からニューヨーク迄) (2)

サンフランシスコ市からシカゴを経てニューヨーク市へ着く迄の旅日記を記してみると。 七月三日午前十時二十分 サンフランシスコの対岸オークランドから南太平洋鉄道会社(SOUTHERN PACIFIC R.R)の一等寝台車(PULLMAN CAR)の人となってこの駅を離れた。 …