明治・大正・昭和を生きた日本人絵付師の生涯

美術、陶器、戦争、NY渡米、渡欧。明治・大正・昭和を生きた夫の曽祖父の自叙伝。大変興味深い内容でしたのでブログにしました。

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

第十一章 ヨーロッパ行(イギリスからオランダ迄)(4)

美術の国、これは誰でも考える事で美術家は是非此処で修行をしなければならない、という事は建築物や郊外の景色が皆絵になる様な事とルーブル博物館には美術品が網羅されており、研究材料に事欠かないという事も重要な要素である。又フランス人が美術思想に…

第十一章 ヨーロッパ行(イギリスからオランダ迄)(3)

歩道にはレストランが軒を突き出したりテントを張って美しく飾りその下には椅子やテーブルが並べてあり人々の食事や休憩の場所となっている。パリーの宵は淡い電燈のもとで何となく情緒がある。 ブルーバール通りはニューヨークの五番街通りロンドンのバイス…

第十一章 ヨーロッパ行(イギリスからオランダ迄)(2)

さてロンドンに名残りはつきないが今朝はいよいよドーバー海峡を渡りフランスのパリーへ向かうのだ。 この海峡は僅か二十二哩(約三十五粁)の短い距離ではあるが渡船では四時間二十分かかる。然し潮の流れが速く少し風でもあれば小さな船は木の葉の様に揺れ…

第十一章 ヨーロッパ行(イギリスからオランダ迄)(1)

ニューヨークを出帆したのは大正九年十一月十三日であった。荒木君が人形製造の機械を買う為にドイツへ行くのを機会に同行する事となった。 私は船にはあまり強いとはいえないが、太平洋での経験も有り少しは自信もあったので少し位のシケでは酔う事はない。…

第十章 ニューヨーク市所見(4)

地方都市見聞 ワシントン市 ニューヨークから十数時間で行ける。首府であり政治都市である。ホワイトハウス、国会議事堂、総大理石の華麗な図書館、公園内に高く聳びえる五百五十五呎(約四十八米)のエジプトから移築したワシントンモニュメント等他に役所…

第十章 ニューヨーク市所見(3)

◯富豪では「ロックフェラー」や「モルガン」や「バンダビルト」や「カーネギー」等という人が居り一千万ドル以上の富豪が、現在一万人以上もいる相だ。 ◯女尊男卑の風習はこの頃稍、下火の様だ。電車の中で女性が塩鮭の様になっていても、知らぬ顔をして眠っ…

第十章 ニューヨーク市所見(2)

橋梁ではイーストリバーのブルックリン橋が世界一と言われている。十三年の歳月と二千万ドルの巨費を投じて今から三十年前に開通したもので、全延長五千九百八十九呎(約千九百米)丁度日本の十六町六間余である。 橋桁の高さは満潮時水面から百十呎(約三十…