明治・大正・昭和を生きた日本人絵付師の生涯

美術、陶器、戦争、NY渡米、渡欧。明治・大正・昭和を生きた夫の曽祖父の自叙伝。大変興味深い内容でしたのでブログにしました。

2022-02-08から1日間の記事一覧

第六章 日露戦役 - 奉天付近の会戦記(5)

三月十日 この付近は我々が着く前に第九師団が苦戦した所で、今尚敵は桃家屯付近(約四千米南東)に居り堅固な陣地に立て籠っている。我々の任務はこれらの敵を撃破し第三軍を援助する事である。午前二時 大石橋東南端、街道寄りの畑地に肩墻を構築し、工事…

第六章 日露戦役 - 奉天付近の会戦記(4)

三月七日 今日も終日繰り返し楊子屯の敵砲兵を砲撃したが、敵の火力は尚衰えず昨日に増して激しく夜になっても砲撃は止まなかった。我方は午後九時頃砲撃を止め宿営地に戻り警急宿営をした。午後十時四十分 第八師団の命令を受けた。 第八師団命令 於 大楡樹…

第六章 日露戦役 - 奉天付近の会戦記(3)

三月二日(木曜日)この日私は中隊段列の指揮官として後方陣地にいたので、直接戦闘に参加しなかったが長灘に本隊を置いていた敵も昨日、月泡子と年魚泡の戦闘に敗れ長灘を捨てゝ退却を始めた。我中隊は終日之を長灘の北方へ追撃した。本隊の第一、第二中隊…

第六章 日露戦役 - 奉天付近の会戦記(2)

明けて三月一日(水曜日)この日天気は晴れていたが寒風は身を切る様に冷たい。 払暁、かねて工事をして置いた渾河右岸(蕜菜河子の西方)畑地に砲列を敷いて月堡子と年魚泡の敵陣地に向って砲撃を開始した。これが奉天付近の大会戦の第一日であった。 我大…