明治・大正・昭和を生きた日本人絵付師の生涯

美術、陶器、戦争、NY渡米、渡欧。明治・大正・昭和を生きた夫の曽祖父の自叙伝。大変興味深い内容でしたのでブログにしました。

2022-08-03から1日間の記事一覧

第十三章 (合)広進商会(4)

こんな事が永く続く物ではない。それに大正十四年の夏から三ケ月も私は大病で寝て終った。大磯君一人で相当頑張ったが深い穴は埋める事も出来ないし又挽回する事も出来ない様になって終った。五カ月間、玩具の改善に努力した甲斐も無く、事こゝにきて解散す…

第十三章 (合)広進商会(3)

関東大震災の一年前、大正十一年十一月二十六日従来の店舗が狭くなったので、下竪杉町一丁目二番地へ移ってからは益々忙しくなった。 震災後小田原で木製玩具の製造をしていた、倉橋連之祐という人が私が森村組に勤務中、度々取り引きで知合であった関係から…

第十三章 (合)広進商会(2)

記念品や広告の様の物は時期と日時の制限があり又数量と形でも日本陶器にストックの有る物と新たに作らなければならない品があり、作るには相当の数と日数がかかり仲々注文通りの日に間に合わない事や、少しづつの注文でも合わせるとストックの数が足りなく…

第十三章 (合)広進商会(1)

拝啓 薫風緑樹の候益々御安泰之段奉慶賀候 陳者小生儀永年森村商事株式会社及び日本陶器株式会社に在勤中は公私共に一方ならず御懇情を辱うし、誠に有難く奉感謝候、然る所今般都合に依り、四月三十日限りを以て退社致し、更に各重役諸氏の御賛助と、各工場…

第十二章 ドイツ行から帰国迄(5)

香港に着いたのは二十九日だったと思う。そこの傾斜地に建てられた住宅の夜間の光の美しさは有名である。船は段々日本海に近くなった。上海に寄航してから冬服に着替えたり荷物の整理をする。四十余日の航海も終り数日後には長崎に着くのだ。 船中では「さよ…