明治・大正・昭和を生きた日本人絵付師の生涯

美術、陶器、戦争、NY渡米、渡欧。明治・大正・昭和を生きた夫の曽祖父の自叙伝。大変興味深い内容でしたのでブログにしました。

2022-08-02から1日間の記事一覧

第十二章 ドイツ行から帰国迄(4)

ベルリンの宿では英国人のモリソンという日本語をよく話せる人が旅行者の世話を大変よくしてくれた。官庁の手続きや列車の切符迄も買って呉れる。行く先々には便利な人がいてくれるものだ。言葉が判らなくても心配はない。 寝台車でベルリンを離れた。途中ベ…

第十二章 ドイツ行から帰国迄(3)

ホテルは何と言っても外国からの観光客や商人等で賑っている。物資も相当備えてあるし、それ程不自由ではない。食堂へ行けば美食もできるしワインもウィスキーもある。 只電燈の数が減っているのと砂糖の無い事位であろう。それに目立たないものに革製品と金…

第十二章 ドイツ行から帰国迄(2)

一週間たった或日、ロンドンのローゼン氏から送金があった。米貨四百ドルでA君と二人で受取りに行く事になった。 先日此処へ着いた翌日、日本大使館を訪れた時の注意に「日本人は兎角、金を持つと誰の前でもこれ見よがしに、札をパラパラ出して買物をしたり…

第十二章 ドイツ行から帰国迄(1)

欧州大戦は五年も続きドイツ軍は孤軍奮闘、連合軍を悩ませていたが千九百十八年八月、最後の大反撃も空しく連合軍の猛攻撃により先ずオーストリヤ軍が敗れ続いてブルガリヤが無条件降伏しトルコも之に倣った。 戦争中の国内の物資の欠乏はその極に達し且敗戦…

第十一章 ヨーロッパ行(イギリスからオランダ迄)(6)

旅券にベルギーの査証を受け十二月七日パリーを発ちブリュッセルに着いたのは午後であった。パレスホテルに一泊した私は有名な日本ガーデンを見る。五重の塔が池に影を写しているのを見て懐かしく感じた。有名な小便小僧は横町の目立たぬ所にある。平日は裸…

第十一章 ヨーロッパ行(イギリスからオランダ迄)(5)

セーブル 此処は名高い国立陶磁器製造所がある。 一日此処を訪れた。精巧な製品は只感嘆の他はない。然しこの製品は販売されていないので、市中では見る事は出来ない。 一通り市中の見学も終わったので百貨店を廻り見本になる品物を買い集め心許りの土産物も…